2025.05.01
床と壁の音響特性
室内床の種類と音響特性
室内の床材は見た目や耐久性だけでなく、音の伝わり方にも影響を与えます。足音の響きや吸音効果を考慮しながら、環境に合った床材を選ぶことが快適な空間づくりにつながります。
フローリング
フローリングは木材特有の温かみのある音響特性を持っています。踏みしめるたびに「コツ、コツ」と響く軽やかな足音が特徴です。無垢材のフローリングは特に自然な音の反響があり、開放的な空間に適しています。ただし、硬い素材ゆえに衝撃音が響きやすく、階下への音の伝達には注意が必要です。
クッションフロア
クッションフロアは柔らかい素材でできているため、足音が吸収されやすく、比較的静かな環境を作ることができます。「トン、トン」と抑えられた音が特徴で、マンションなどの集合住宅では防音対策としてよく用いられます。また、歩行時の衝撃が緩和されるため、小さな子どもや高齢者にも優しい素材です。
畳
畳は音の吸収性が高く、足音や物を落とした際の音が柔らかく響くのが特徴です。「サクッ、サクッ」といった独特の静かな踏み心地があり、和室の落ち着いた雰囲気を作り出します。また、畳は音の拡散を抑えるため、楽器の演奏などには適さないことがありますが、静寂を求める空間には最適です。
カーペット
カーペットは吸音性を持ち、素材や厚さ、様々な種類がありますが、毛足が長く厚みのあるふわふわなものは音をほとんど反響させません。足音は「フワッ、フワッ」と消え入り、まるで無音に近い歩行感を提供します。映画鑑賞や読書をする静かな空間を作るのに適しており、防音対策が必要な部屋に最適です。一方で、音がこもりやすいため、広がりのある音響効果を求める場合は不向きです。
タイル
タイル床は硬いため、足音が「カン、カン」と鋭く響きます。そのため、音が反射しやすく、開放的で明るい音響空間を演出できます。ホテルのロビーや美術館のような響きのある空間に向いていますが、生活音が反響しやすいため、居住空間には適度な吸音材を組み合わせることが推奨されます。
室内壁の種類と音響特性

石膏ボード(乾式壁)
石膏ボードは最も一般的な壁材で、表面はクロス貼り仕上げが一般的です。クロスの張替でお部屋の雰囲気を変えたり、汚れ等による経年変化も対策できます。
- 音響特性:部屋のなかに家具などの内容物がないと反響が一様に起きるため単一な無機質な響きが感じられます。
- 用途:住宅、オフィス、学校など、幅広く使われています。

コンクリート壁
コンクリート壁は非常に硬く、音を強く反射します。部屋に容積がなく、入り組んだ形状でない場合、反響による音の飽和状態になる要素があります。広い空間では残響が大きくなるため、適度な吸音材を併用することが推奨されます。
- 音響特性:低音域の響きが強く、クリアな音を生むが、反響しすぎることも。
- 用途:マンション、商業施設、スタジオの防音構造などに採用。
木材の壁
木材は音の柔らかさを生み、心地よい音響環境を作り出します。種類によって音の吸収性が異なり、適度な温もりを加えます。
- 音響特性:音の反射をほどよく抑え、自然な響きと温かみのある音を提供。
- 用途:住宅の居室やログハウス、カフェなど、落ち着いた空間に適する。
吸音パネル(布張り壁)
吸音材を組み込んだ壁は、音を吸収し、反響を防ぎます。静寂な環境を実現します。
- 音響特性:音の吸収効果が高く、響きを抑えて快適な空間を作る。
- 用途:映画館、録音スタジオ、会議室、ホテルの静音空間などに最適。

吸音パネル(木製壁)
木製吸音材は、材の構造と施工方法により部屋の調音をします。良質なデザイン性も期待できます。
- 音響特性:音の吸収と響きをバランスよく音の調和をつくり快適な空間を作る。
- 用途:映画館、録音スタジオ、会議室、ホテルの静音空間などに最適。
タイル・石壁・ガラス
硬質な素材の壁は音を強く反射し、響きのある空間を演出します。音が広がりやすいため、開放感のある設計に向いています。
- 音響特性:音の拡散が強く、明るくクリアな響きを生むが、吸音性は低い。
- 用途:ホテルのロビー、美術館、レストランなどの高級感ある空間に適する。
床、壁面を同じような特性をもつ素材で部屋を構築した場合、反響が単一な無機質に感じられます。部屋の形が複雑に入り組んでいない四角形の部屋ほどそれが強く感じられます。
リビング、寝室、シネマルーム、楽器演奏など使用目的に合わせて、壁面を縦方向、横方向を上手に区分けして素材を張り分けをすると反響音、吸音周波数が偏らなく豊かな響き環境が期待できます。
全面吸音特性の強い素材にしますと、生活しづらい空間になります。
使用目的が音声集録、動画撮影の場合などにはふさわしい空間になります。
音響の観点から床材や壁材を選ぶと、快適な空間作りがさらに深まります。