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「清水 和音 ピアノ・リサイタル~響きわたる歓び~」【公演日】2016年2月28日【開演】14時【開場】13時30分【会場】オリンパスホール八王子

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【会場】オリンパスホール八王子 大ホール


プロフィール

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清水和音さんインタビュー

2012年は有森博さん、2014年は仲道郁代さん、2015年は上原彩子さんをお招きし開催した弊社主催ピアノリサイタル。2016年は清水和音さんをお迎えいたします。清水さんは若干20歳でパリのロン=ティボー国際コンクール・ピアノ部門で優勝。ピアニストとしてセンセーショナルなデビューを果たして以来、30年以上にわたって第一線のピアニストとして強い存在感を示してこられました。 「リサイタルって名目がいろいろくっついてくると、内容も本質から遠ざかる危惧があるでしょう? 僕は本質的なところでやっていたいから、淡々とふつうに弾くだけ」というシャイで真摯なピアニスト・清水和音さんに、ピアノについて、今回のプログラムについてお話をうかがいました。

ピアノ嫌いの野球少年

――清水さんがピアノを始められたのは?

ピアノはいつも身近にあって、気がついたら弾いていたという感じです。桐朋学園の「子供のための音楽教室」に入ったのは5歳ぐらいのときですが、ピアノはなりゆきで始めたようなもの。「和音」という名前も、音楽をやる運命を背負ったように言われてしまいますけど、名前にどんな意味をこめるかなんて僕には関係のないことだしね(笑)。 毎日外に遊びに行って、もう遅いからピアノを弾くと近所迷惑になるという時間に帰ってくるようなふつうの少年でした。ピアノはテレビを観ながら弾いていたし、弾きながらいつもほかのことばかり考えていました。簡単にいうとピアノの練習が嫌で嫌でしょうがなかったんです。友達ともみ合いになって胸元をつかんだら、その子の洋服のボタンホールに指が引っかかって、逃げた相手に指を持っていかれて骨折し、コンクールに出られなかったこともあります。ピアノの先生は大変だったと思いますよ。 でも、少年時代は弾けちゃったんですよね。

――野球が好きで、ピアノの練習は嫌いだけど弾けちゃった少年は、桐朋の高校から大学には進まず、スイスに留学。それは「ピアノで生きていこう!」と思われて?

 ピアノで生きていこうなんていう覚悟はいまだにできていないですよ(笑)。大学に進まなかったのは格好のいい理由があるわけじゃなく、遊んでばかりいて高校の出席日数が足りなかったから。日本のコンクールで1位をとったことはないし、高校を卒業するときも将来のことは何も考えていなかったですね。でも、ピアニストにはなれると思っていたし、そのことに疑いはなかった…。 高校卒業後は今でいうニートだったんですけど、それも1年もすると飽きてくるんですよね。生きていくために何をしようと考えたときに、自分に一番よくできることがピアノだったというただそれだけ。留学先のジュネーブは当時大変な物価高で、マクドナルドのビッグマックが日本円にして1000円ぐらい! 我が家は特別裕福な家庭ではなかったですから、長く留学なんかしていられないと思いました。

20歳でピアニストとしてデビュー

――そうして受けたロン=ティボー・コンクールで優勝。20歳でピアニストとしてデビューされたのですね。

コンクールはふつうに弾ければ1位をとれるはずと思っていましたが、受賞後の忙しさは想像以上でした。自分はなんでもできると思っていたのに、演奏の依頼が来るのはやったことがない曲ばかり(笑)。翌週までに仕上げるという日々は本当に大変でしたよ。10代はほとんど勉強していなかったんですから当然ですよね。でも演奏の機会が次々与えられたことはラッキーなことで、分不相応の幸運を相応にするために頑張れたんだと思います。

――清水さんは、オーケストラの共演も多いですね。

僕はなぜか音楽家仲間からは人気があって(笑)、コンチェルトによく呼ばれるんですよね。50歳を過ぎてコンチェルトができるのは、いままで膨大な数のソロのステージをやってきたことが支えになっていると実感します。 初見はそうでもないんですけど、2回目でけっこう弾けるというのは、桐朋で音楽の基礎と底力はついたのかもしれません。でも、齢をとるとフィジカルをキープするのは大変ですよ。最近、ちゃんと弾けるかどうかが問われるのは齢をとってからだと実感しています。年齢を経ると精神的に成長して人間的な深みは増しますが、それに技術が追いつかなければよい演奏にはならない。年齢とともにフィジカルが大事になるし、それができていれば、誰しも年齢とともに演奏のレベルは上がるはず、と信じています。

精神性と技術のバランス

――ピアノを続けていくモチベーションは何ですか?

モチベーションなんか必要なくて、ただ弾くだけ。仕事ってそんなに甘いものじゃなくて、ピアノは昔も今もずっと辛いですよ。自分をピアノの前に座らせるのが大変です(笑)。ただ、歴史の年号を語呂合わせで覚えるようなやり方はしたくなくて、年号をそのまま覚えるように淡々とピアノを弾きたい。ピアノが弾きたくなかったらそこでおしまいだと思っています。

――日々の練習ではどんなことを意識すべきでしょうか。

毎回同じことを同じようにできるようにするための練習と、創造性を見い出す努力が必要です。練習で身にについた技量は個性となって演奏に反映されるけれど、どんなにがんばっても発想はその人以上にはならない。人間性が素晴らしければ素晴らしい演奏になるということです。天才といわれる人たちは単純な練習の中に創造性をも見い出す凄さをもっているけれど、ふつうの人はそうはいかない。僕もいろんな経験から何かを感じ、すごく遠回りして自分の中に生まれたものでピアノの創造性を見い出しています。練習のときには、常に違う発想でトライしてみることが重要ですよね。 アメリカの大リーグの野球を見ているとワクワクするのは、少年野球の延長のように、思いきり投げて思い切りバットを振り回す姿に爽快感を覚えるからですよね。ピアノはスポーツとは違って勝負ではないから、人を喜ばせて、心に何を残せるかが問われます。

――今回のプログラムはベートーヴェンとショパンです。ベートーヴェンは今年新しくCDに採録された「月光」と「熱情」も。楽しみですね。

ベートーヴェンは代表作2作を、ショパンは後期の曲を選びました。どんな作曲家も後期のほうが内的なものが熟成されて曲がよくなりますが、ベートーヴェンとショパンはその典型。ショパンは晩年に向かう30代前半に初めてフーガを1曲書くんですが、それを機に曲の構造が複雑になって凄みが出て、その後の楽曲はすべてが傑作といってもいいほどに創作が一変しました。圧倒的な魅力を放つベートーヴェンとショパンを存分にお楽しみください。

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